地域のなかに”ゆらぎ”をつくり、回遊機能を持たせる④

ともすれば、資本主義と科学主義は、その隅々までコントロール
しようとする働きのために、すべてをわかりやすく、すべてを
合理的なものに作り替えようとする力が強い。

そうなると、いつも何かしらの「枠」にとらわれやすくなり
身動きがとりにくい状態に本人の意思ではなく陥りやすい。

我々の資本主義と科学主義というのは、人々の欲望を開放させる
ものであると同時に、個として閉じさせていく両面をもっている
といえる。

シェア、特にシェアハウスやゲストハウスのおもしろさという
のは、遊牧民を回遊させ、「硬直化させない」ところにおもしろ
みがある。非常に風通しのいい「場」といえる。

この良い例が、年齢も職業も性別も異なる人々が出会え、
予想もつかなかったことが起きる「偶発性の場」になって
いること。

例えば、昨日教え子が友人と遊びに来ましたが、友人とは出会っ
たのも2週間前。シェアハウスで意気投合し、上勝までメールのやり
とりだけでやってくる。
そして、また、出会いがどんどん広がるという「偶発性」が活発に
起きる。シェアの現代意義について朝まで語り、ボクがこうして
facebookに文章でまとめるという行動を誘発させる笑。

この、未来に何が起こるかわからない「偶発性のおもしろさ」と
いうのが、資本主義や科学主義が強烈にコントロールしようとする
のと正反対の力に働くのが、非常におもしろい現象だと。

ボク自身は、地域再生の文脈で、この偶発性のおもしろさに
引きつけられる、ワクワクしたい遊牧民を集める装置として、
シェアハウスやゲストハウスの有効性を考えていましたが、
これまでの思想史的な流れでも読み解くと、非常におもしろい
ことが見えてきました。

硬直化しようとする流れに、偶発性で対抗し、硬直性に
「ゆらぎ」を与える。この「ゆらぎ」という現象が、実は
我々の新しい成長=進化にもつながるのではないかと思い
始めました。

これをわかりやすく喩えると、会社に入り、役所に入り、
「レールの上を走る人生」を送ると、やはり考え方は硬直化し
やすいですし、成長しなくなる可能性が高い。
逆に、転職や出向などをすると、異なる文化の組織に入り
その適応を迫られるので、成長しやすい面はあります。

僕らが一生懸命田舎で取り組んでいることというのは、
この「ゆらぎ」を至る所に引き起こし、その揺らいでいる
地点を結びつけ、人々を回遊させることで、おもしろい
人を引きつける「磁場」を作る。

まさにコイルのようなイメージで、おもしろい人を
ぐるぐる回す。

そのことによってできた「磁場」に吸い寄せられ、
人々はおもしろいことをしながら定住へと近づいていく。

あるいは、回遊先を上勝のような場所だけでなく
神山や徳島市、三好市、美波町などなど、おもしろそうな
エリアに「ゆらぎの場所」を作り、回遊のネットワークを
広げることで、その磁場が大きくなり、生きやすく、住み
やすい場が形成されるのではないか。

そういう仮説の素に広域連携型地域おこしを行っている
のが自分の仕事ではないのかと、いろいろ気づきの深まった
数日でした。

シリーズになっちゃいましたけど、どうも、このゆらぎを
作り出すのが、生物の進化としても最適生存の理にかなっている
気がします。

実に、おもしろい。

<終わり>